どう見ても、新しいスポークが無いと、動く事が出来ない。触っているうちに、スポークの構造は分かったが、取り敢えず、予備が無いので、何も出来ず。
昨日出会ったウィルが通り掛かる。さすがに、スポークは持っていなかった。すまなさそうに、ジュースを一本置いて、先へ進んで行く。
助けを求める事にした。そこに通り掛かった、ベン。快く、車に乗せてくれ、「自転車を売ってるウォルマートがあるから、連れてってあげるよ」。
ベンは46歳、家族が軍に勤めていたので、子供の頃、立川基地に住んでいたらしい。ほんの少しの日本語と、ウルトラセブンの主題歌を知っていた。日本語は分からないが、ウルトラセブンは眺めていたそうだ。そんな訳で、親日家だった。「お母さんがインディアで、テキサス出身なんだ。テキサスより家賃が安いからね、ルイジアナは」、安い訳は、何となく分かる。
ウォルマートに到着。自転車売り場に行くも、唖然。100ドル以下の中国性の自転車が、ズラリと並ぶ。修理が出来る人もいないし、部品も無い。
顧客サポート係のケイに相談、どうすれば良いか、話し合う。
まず、この辺りでは、自転車の修理などしない事が分かった。壊れたら、新しいのを買うのが常識だ。だから、100ドル以下のものしか売っていない。良く考えてみたら、車が無いと生きていけないような場所で、自転車を真剣に乗る人がいる訳が無いし、今まで出会った自転車旅行者は、皆、都会の人といった人達ばかりだった。
調べてもらったが、一番近いバイクショップは、ルイジアナ州都のバトンルージュにしかない事が分かった。では、どうやってバトンルージュへ行くか。近くのアレキサンドリアという街から、バトンルージュまでバスが走っているので、これで行く事にする。では、アレキサンドリアまでは、どうすれば良いか。この辺りには、タクシーも無い。
ケイが、「私にまかせて」という事で、暫らく待っていた。何と、アレキサンドリアまではケイの友達が送ってくれる事に、そして、バトンルージュまでのバスの予約も、全部済ませてくれた。ウォルマートの係員が、ここまでしてくれるとは、まさに感激。散々の御礼を言い、記念に写真を撮ったが、「綺麗に撮れてる?」と、しきりに気にしていた。大丈夫、その人柄は、しっかりと写真に納まっている。
バスに乗る事、3時間。道中、ラジオから聞こえてくるのは、妙なアクセントのフランス語。これが、ケイジャン語だ。通りの名前も、ほとんどがフランス語になっている。バトンルージュに到着したら、夕方になってしまったので、取り敢えずホテルに泊まる。明日からの行動、スポークの事、色々考えるが、まずは「ストイックな自転車の旅」であったはずが、珍道中へと変わっていく事に、乾杯。
ホテルで、ひっそりとシャンパンを飲む事にした。それにしても、今日は、皆に助けられた。
走行距離:32.87キロ 通算:4603キロ
宿泊地:バトンルージュ、ルイジアナ州