テキサスは広かった

今日は、朝から小雨だ。久しぶりの雨なので、逆に清々しい。太陽が眩しくないのも、新鮮だ。喫茶店で、ゆっくり寛ぎながら、街を眺めていた。



明日、テキサスを離れる。本当に、大きかったし、色々な事があった。

テキサスと言うと、どうしても、カリフォルニアと比較してしまう。同じ南西部にあり、面積が広く、人口が多く、経済規模が大きい。何れも、豊かな州だ。それでいて、カリフォルニアは、多きな政府、流行に敏感。テキサスは、小さな政府、我が道を行く。全く逆の性格である。豊かさの基準が違う。

1960年代と2010年代が融合したような、「大きい事は、いいことだ」を実践し、豊かなアメリカを謳歌するような、テキサス共和国だった。



アメリカの経済が低迷する中、テキサスは好景気が続いている。肌で感じる程だ。

今日の夜は、この辺りに沢山看板がある「ナマズ料理」を食べに行く事にする。



白身で、くせが無く、悪くない。あっさりしてるせいか、特に感動は無かった。

走行距離:156.03キロ 通算:4431キロ
宿泊地:カウンツ、テキサス州

アンティークとリサイクル

小さい街では、必ず中心にガソリンスタンドがあり、マーケットが併設されている。街の万屋である。

ワレントンという街のマーケットで、ジュースを飲み、そこの店主である伯母さんと話す。40年間働いていて、死ぬまで続けるらしい。1日でも休むと、街の人が心配するから、旅行に行った事も無い。「この街は、アンティーク市で有名なの。日本からも仕入れに来て、トラック一杯買っていくけど、あんなガラクタどうするの?」

市場ではなく、店に入ってみた。



確かにアンティークだが、リサイクルとの境界線は、意外と微妙だ。



この後、国立公園の中をずっと走る。森で風が冷やされ、心地良く居る事が出来る。



湖の畔で、一休み。



今日は、ずっと自然の中で過ごした。

走行距離:147.39キロ 通算:4275キロ
宿泊地:ハンツビル、テキサス州

ちょうど一ヶ月

これは、バストロープという街。



西部劇調であることは、言うまでもないが、ここの特徴は、すぐ隣に巨大なモールがあり、ナショナルブランドの店が沢山並んでいる事だ。新旧の街が、上手く調和している。そして、裏には、綺麗な州立公園が広がっている。



ラグランジェという街に寄った。建築様式が、テキサス調から少し変わった感じがする。また、アフリカ系住民を見掛けるようになり、ルイジアナが近付いている事が分かる。



ちょうど一ヶ月経ったところで、気分転換に床屋へ行く事にする。



いかにもテキサスといった青年が、手際良く髪を切っていき、「ルイジアナへ行ったら、ワニに気を付けなよ」と、冗談だか本気だか分からない事を言う。

クリスとジェイク、フロリダからサンディエゴへ向かって、旅している。軽装で、毎日長い距離を走るスタイルが似ているので、つい長話しをする。



「ルイジアナから先は、真っ平らで楽だよ」だそうだ。

その後、スティーブという紳士と出会う。自転車が好きで、毎週末、仲間を集めてツーリングをしているらしい。「今日は、うちのゲストハウスに泊まっていかない?」という事で、すっかり世話になってしまった。



広い庭の一画にある、ゲストハウス。というか、十分普通の一戸建ての広さだ。スティーブも、テキサスの事を共和国と言う。テキサスの人は、テキサスが大好きだ。

走行距離:130.19キロ 通算:4127キロ
宿泊地:ゲイヒル、テキサス州

雪辱レストラン

今日は、リアタイヤを交換するために、最初にバイクショップへ行く。少しだけ、太いのにしようと店員と相談。バイクショップの店員は、どこも同じ雰囲気だ。ぎこちないが、懇切丁寧に対応してくれる。



パンクしない道具を、紹介してくれる。タイヤとチューブの間に入れる、硬いテープ。10ドルなので、試してみる。

その後、街を見て回る。



街の中心に君臨する、州都ビル。革命を起こし、メキシコから独立、しばらくは独立国であった歴史について、大きく触れている。



テキサス州では、何処へ行っても、国旗ではなく、州旗がなびいている。

途中で、KYOTOというレストランを見つける。やはり、日本食が食べたくて、入る事にした。メニューを見て、アメリカ人向けである事は分かったが、「ワショク」という定食は、悪くなさそうだ。



正解だった。ようやく納得して、オースチンを後にする事が出来る。

ジムサマーという、俳優みたいな名のご老人と出会う。



大学教授をしていて、夏休みには、いつも自転車で旅をしている。キャリアは、20年以上。テキサス訛りがはげしく、聞き取りにくい。

走行距離:79.25キロ 通算:3997キロ
宿泊地:バストロープ、テキサス州

久しぶりの都会

コンフォートは、コロニアル風の街並みを、修復しながら綺麗に保っている街。アンティークショップ、洒落た喫茶店、レストラン、パン屋等が立ち並ぶ。



街ぐるみで努力しているのが、伺える。ここで、コンチネンタルブレックファーストを食べたが、どことなく繊細な味がする。

ブランコという街で、面白い風景を目撃する。この街は、全体が西部劇調で統一されているが、その中心地の建物が、街と調和を取るかの如く、改装中であった。



今は、テナントが入っていない状態だが、街づくりに対する思考が日本とはレベルが違う気がする。ここは、本当に小さな田舎街であるのに。

この辺りの農家は、庭に古い耕具を置き、飾っている。中には、ミュージアムの様に、多くの耕具を綺麗に並べている所もある。



喫茶店で出会った、アンジー。高校で、ヨガを教えている。精神世界、宗教、日本やアジアの事に興味があるらしく、長い間、話し込んでしまった。この後、高校で栽培している野菜を食べに行く。隣は、通り掛りの、スピード君。



この後、オースチンへ到着する。フェニックス以来の、都会。街中なので、今日はホテルに宿泊。近くの日本食レストランで、晩飯。



何とも、アメリカンな日本食であった。飲食関係の人から聞いた話だが、日本人を相手にした日本食レストランの経営は、安定しないらしい。景気によって、駐在員の数が増減するからだそうだ。その点、アメリカ人を相手にした方が、安心できる。よって、アメリカ人が好きな味の日本食、という事になる。

決して、不味い訳ではない。日本の味でない、というだけだ。美味しかった。

走行距離:188.20キロ 通算:3918キロ
宿泊地:オースチン、テキサス州

馬が歩く街

今朝は、小川のせせらぎを聞きながら、珈琲を一杯飲む。こういう景色には、つい立ち止まってしまう。



リーキーという街に立ち寄る。街全体が、巨大なゴルフ場の様な形状をしており、平に開けて、その中心に西部劇のセットの様な通りがある。



草の匂いが一帯に浸み渡り、清々しい気分になる。裏通りは、本当に綺麗な小川が流れている。



この街では、車ではなく、馬が堂々と歩く。その馬を、自由自在に操る少年の姿を、一枚。



この街の人は、皆、愛想良く微笑んでいる。

この辺りには、道沿いに点々と、ピクニックエリアがある。しかも、必ず身体障害者のために、バリアフリーとなっているのには、関心する。



街で見かけた風景を一枚。蜂鳥に、餌を与える道具を見つけた。カメラを向けたら、逃げてしまったが、本当は、2〜30匹が蜜を飲んでいる。この道具は、作ったのではなく、売っているらしい。



今日の宿泊地にも、アンティークな建物が並んでいるが、到着が遅くなったので、明日見学することにする。

走行距離:189.84キロ 通算:3730キロ
宿泊地:コンフォート、テキサス州

花畑牧場

昨日は、随分スタミナを取ったので、今日は疲れ知らず。街を抜けると、綺麗な花が咲き乱れる道が続く。



牧場が並び、様々な動物が食事中だ。

何処からか、冊を抜け出してしまった小牛が、道のまん中で遊んでいる。母牛が、冊の中から心配そうに見ている。



山羊は、好奇心旺盛に近寄ってくる。



今日のキャンプ地は、川の畔の、本当に綺麗な所だ。家族連れで、バーベキューをしたり、水遊びをしたり、芝生で寝転んだり、楽しそうに過ごしている。



緑豊かな所は、虫も多い。少し川に入ってみたが、水は冷たかった。

走行距離:125.76キロ 通算:3540キロ
宿泊地:キャンプウッド、テキサス州

順風が吹く

今日は、昨日と打って変わって、追い風が吹く。背中を押される様に、スピードが乗っていく。雲が、ゆっくり流れて行くのが分かる。猿岩石の「白い雲のように」が、頭に浮ぶ。



この辺は、牛ではなく、羊を飼っているようだ。羊は、シャイである。



予定より早く、アミスタッドに到着。ダム湖であるが、国立公園に指定されている。



水の景色は、サンディエゴを出発して以来。一面がリゾート気分で溢れている。この景色には、本当に癒された。ここで、昼食を取る事にする。テキサスらしく、特大のステーキ。

この後、程なくデルリオという街に到着。たいした街では無いが、人が大勢いる景色は、エルパソ以来。

今日は、ここでホテルに宿泊。服、靴、鞄、全て綺麗に洗濯して、気分がスッキリする。ついでに、和食でも食べたかったが、そうはいかなかった。代わりに、中華のバイキング。



この辺の住民は、ほぼメキシコ系だ。エルパソでは、メキシコ先住民系が民族服を来ていたイメージだったが、ここでは、混血系がカウボーイの格好をしている。ほぼ、バイリンガルである。

メキシコは、スペイン系、先住民系、混血系から構成される。早くから、アフリカ奴隷を禁止していたので、黒人系はほとんどいない。もっとも、その事に反対したテキサスが独立、南西部の州一帯がメキシコからアメリカへ編入されるきっかけとなるのだが。

スペイン系メキシコ出身の人が、カウボーイの格好をしていた。見た目から、てっきりアメリカ人だと思ったのだが、英語が話せなかった。東京で、「みんな英語で話し掛けてくるけど、フランス人だから、英語が分からない。しかも、日本語話せるのに。」と言う人を思い出した。

今日は、あちこちで、寛いだ。

走行距離:108.93キロ 通算:3414キロ
宿泊地:デルリオ、テキサス州

街の行方

旅の生活にも、随分慣れて来たので、荷物を整理する事にした。用意周到にとの思いから、余計な物まで色々と持って来ていたので、まとめて家に送る事にした。

朝、近くの郵便局に寄る。そういえば、今まで、どこに行っても、街の中心に郵便局があった。この街の郵便局は、今にも倒れそうな建物に、間借りするかの如く、ドア1つの小さな部屋で営業していた。中では、1人で作業している。



日本と同じく、アメリカの郵便局も赤字が問題となっているが、隣の街まで何十キロという立地を考えると、こんなささやかな郵便局なら残すべきだ。

用事を済ませ、出発。隣の街まで、100キロ。今日こそは、途中に何も無い。日々、緑が濃くなっていく風景を、1枚。湿度も上がっていく。



50キロ地点、国境警備隊が道の脇で待機しているのに遭遇。少し、話をする。他には、人に会わない。

85キロ地点、向こうから2人連れがやって来た。グレッグとジェフ。随分と軽装だが、テキサスを横断するらしい。



今日、宿泊する街について聞いた。「20〜30人位の街かな、何も無いよ」。

その通り、かなり、廃れている。小さいながら綺麗な景観を保っている街、そうで無い街、何が違うのだろうか。



自転車にとって、上り坂は天敵である。上り坂、下り坂、一日に何度も人生を送っているようである。小泉元首相は言った、「まさか」がある、と。でも、それだけではない。風が大事だ。向かい風の時は、まったくスピードが出ない。今日は、極度に強い向かい風だった。下り坂でさえ、一生懸命こがなければ進まない。しかも、坂と違って、その場へ行かなければ分からない。自転車は、人生そのもの。

グレッグとジェフは、今日は楽だと言っていた。完璧な追い風である。そんな日も、ある。

走行距離:102.98キロ 通算:3305キロ
宿泊地:ラントリー、テキサス州

アドビ様式の街

朝、地図を見た時から、何となく分かっていた。通り掛かりのガソリンスタンドで朝食を食べてから、誰にも会っていない。そんな、今日の風景。



昨日との違い、分かるだろうか。若干だが、景色全体が緑掛かってきた。それに伴い、風がやわらかく感じる。自転車に乗っていると、そんな微妙な違いが、感じられる。

道に沿って、鉄道が走っている。と言っても、結局1日に2本しか、電車は見なかった。



単線に、壊れかけたような橋を見ると、映画「スタンドバイミー」を思い出す。少年達も、こんな所を歩いて、旅をしていたのだろうか。ところで、あの映画に出て来る不良グループのリーダーは、若かりしジャックバウアー(ドラマ24の主人公)である。

50キロ地点で、ようやく人に出会った。マークとリンダの御夫婦。



フロリダからサンディエゴまで、自転車で旅行している。サンディエゴに着いたら、帰りは電車に乗って、違う楽しみ方をするらしい。「もう少し先に、綺麗な街があるよ」と、教えてくれた。

そして、ここがマラソンという街。ニューメキシコに戻ったような、アドビ様式で統一された所だ。



個性を大切にし、決して無理な発展をせず、伝統を守っていく。そんな街が、アメリカの田舎には沢山ある。ここで、早めの昼食を取り、すっかりくつろいだ。



この街を後にして、宿泊地に着くまで、人に会う事は無かった。

これは、オクラのフライ。この辺では、どの店にも置いてある。



自転車を降り、ビールを一杯飲む時、最高のつまみとなる。日本の夏にも、きっと合うだろう。

オクラは、アフリカ原産の植物。黒人奴隷がアメリカで栽培を始めたらしく、アメリカ南部では一般的な食べ物。「Okra」と書く。

走行距離:137.21キロ 通算:3202キロ
宿泊地:サンダーソン、テキサス州

カウボーイの世界

朝から、人に会っていない。そんな、相変わらずの風景を一枚。



牛には、良く出会う。愛想良く近付いてくるが、皆無口だ。



60キロ走った所で、自転車で旅行している人に出会う。フェニックスから来ているボビー。2年掛けて、アメリカを隅々、ゆっくり廻るそうだ。



暫く、一緒に走ったが、本当にゆっくりだったので、途中で失礼して、先を急いだ。

間もなく、フォートデービスという街に到着。正しく、カウボーイの世界を現存している。ここで、遅い昼食を取る事にした。



如何にも、西部劇という感じの銀行(今も稼働中)が、街の中心にどっしりと建っている。



この建築様式は、この辺りの伝統らしい。レストランで、この街の歴史や伝統を丁寧に説明してくれた。この街に限らず、自分の街に誇りを持っている人は、皆親切で丁寧だ。また、誇りを持つ理由が良く分かる位、綺麗な街である。

この街は、テキサスで一番標高が高く、涼しい気候らしい。そして、この先は暑くなっていくそうだ。

この街には、いたる所にピクニックエリアがある。バーベキューも出来る様になっている。



至れり尽くせりの、幸せな住民である。ところで、あの牛をバーベキューにして食べるのだろうか。

走行距離:126.58キロ 通算:3065キロ
宿泊地:アルパイン、テキサス州